高専は5年制の学校のため、卒業後の進路として大学3年次への編入が、企業等への就職と双璧を成している。
例によって東北大学も高専からの編入生を若干名受け入れており、その選抜方法もまた少しずつ変化してきた。
工学部の中でも学科ごとに若干の差はあるが、電気情報物理工学科(旧情報知能システム総合学科)においては、知る限りでは
~2011年:筆記試験(数学, 物理, 化学, 英語, 専門2科目選択)+面接試験
2012年 : 英語の筆記試験の代わりにTOEICスコア提出1に変更。
2016年くらい?:専門2科目は高専時代の成績調書で換算
という変遷を辿っている。
そして2024年、この歴史に新たな1ページが刻まれた。それは、推薦入試の導入と、筆記試験の数学1本化である。
編入試験はロボコン、ゲーム・アニメに次ぐ高専生の青春である。私自身の経験を元に今回の選抜方法の改定に対する私見を述べたい。
編入試験にも推薦入試が存在しており、多くの大学や各高専の専攻科が実施している。
一方で、旧帝大や東工大の大学は基本的に筆記試験のみ2であるため、推薦使って所謂いい大学に行こうと思ったら千葉大学3や農工大などが天井となる。
この大学群を推薦受験して早々に進路を確定させ、残された時間を遊びに費やすのが、関東あたりの高専生のルートの1つである。
ここで4年次の成績がクラス上位10%以内というのがよく設けられている推薦基準であり、大体高専は1学科(つまり1クラス)40人なので、4位以内に入っておくというのが1つの指標になる。
ただこのシステムには罠というか大きな欠陥がある。
私のクラスは留年生が大量発生したため、4年次には30人強しかおらず4、10%基準は3位までとなっていた。
そしてなんと私の4年次の順位は4位であったため、推薦をもらえない立場に!
もともと使う気は無かったが、クラスの人数が減った理由は留年なのだから、そのしわ寄せが上位から数える推薦基準に響くのは理不尽だと当時から思っており、各大学におかれましては、入学時の人数で計算することをここに進言いたします。
話が少しそれてしまった。
東北大の新しい推薦基準は上位5%。40人クラスなら2位以内ってことですね。うーん、これはかなりいいバランス。
この基準をクリアできる人なら、一般入試でもそう苦労せずに合格できるはず。
つまり、本当に優秀な人だけが推薦で入れる。公平性と効率性を両立させた、賢い基準だと思う。
千葉大等の10%もそうだが、編入試験における推薦基準を満たせる人は、おそらく一般受験でも特別必死になること無くこれらの大学群には合格できるものと思われ、至極妥当なものである。
感覚的には、推薦基準の倍程度の成績を修めていれば、その大学の一般試験が丁度よい難易度になると感じる。
というわけで、東北大学の編入試験に推薦枠ができたこと、大賛成です!
英断です、まさに。
これで、本当に優秀な高専生たちが、より確実に東北大への道を歩めるようになる!
さて、ここからが本題。一般試験の変更について、正直に言うと、かなり首をかしげています。
編入試験ってズル面白いんです。
国公立大学でさえ、日程さえ被らなければ好きなだけ受験できる。
これだけ聞くと「よっしゃ、とりあえず東大も東北大も受けとくか!」なんて思いたくるところだが、現実はそう甘くない。
その理由が「化学」である。旧帝大や東工大の試験には、化学の筆記試験が課されるのである5。
これが曲者。電気系の学生にとっては、まさに鬼門。他の大学ではほとんど出題されないのに、なぜかこの難関校群だけが課してくる。
多くの大学の試験が7月に終わる中、これらの大学は8月末。友達はみんな進路決まって夏を満喫してるのに、方やまだ勉強。
しかも、それまでほとんど触れてこなかった化学と格闘する日々。。
でも、この「化学」、単なる試験科目じゃないんです。
覚悟の証なんですよ。
「この大学に入りたいなら、苦手な分野も乗り越えろ」っていうメッセージ。
編入試験で複数校受験できる中、この「化学の壁」を超える覚悟が、暗黙の出願条件だったとさえ思う。
勘違いしないでほしいのは、化学ができる人だけを入学させるべきだ、なんて言ってるわけではない。
私自身、化学はほぼ勉強せず、その分を数学と物理、専門科目でカバーする気概で挑んだ6。
要は、魂の問題である。
実際、化学があることで、様々なタイプの優秀な学生が集まる。
数学や物理を極めた人、化学も含めてオールラウンドな人。今風の言葉でいうと多様性が広がるのである。
まだ偉く語れるほどではないけれど、研究生活とは好きなことだけやっていれば良いわけじゃない。時には苦手なことにも立ち向かう必要がある。
編入試験にも「化学」という壁があることで、その後の研究生活での粘り強さにつながる、そう勝手に思わざるを得ない7。
もちろん、大学側の事情もあるでしょう。試験問題作成の負担とか。
でも、できることなら東北大には昔のような筆記試験を復活させてほしい。これは、編入生だった私からの切なる願いである。
高専4年のとき初めて受けたTOEICが480点。小手先のテクニックだけ仕込んで臨んだ2回目は520点で、これ以上は勉強しても上がらんと思い、520点で提出した。高専生の英語力の低さはあまりにも有名すぎるが、編入同期の平均点は700半ばくらいはあってとても驚いた思い出。 ↩
一部の大学・学科等では推薦を実施しているが、電気電子系の範囲で話を進める
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いつからか、千葉大学には従来の学校推薦に加え、自己推薦枠というものができ、筆記試験は完全になくなったようだ。千葉大や筑波大あたりは試験日程的に旧帝大の滑り止めに使われがちで、本当に第一志望の人が筆記試験に中々合格できない、合格辞退者が多い状況だったため、これはは受験生・大学両方にとって良い改革に思える。
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当然上の学年からも数名降臨するので、均衡が保たれる場合もあるが、弊クラスは基本赤字であった。卒業時のオリジナルメンバーは28人
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実は東大は物理と化学から選択式なので、化学を使わずに済むのだが。。それはそれ。
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試験本番では大問3つのうち1つが、大学化学らしい物理化学の問題が出題されたのだが、これがなんと物理の知識ゴリ押しで完答できてしまった。合格を確信した瞬間だった。
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私自身の化学への苦手意識が強すぎて、過激な思想が形成されている側面は否めない ↩