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クルスペメタル(2025/2/24)

クルスペメタルとは

金管楽器の音色に大きな影響を与える重要な要素の一つに、金属材料があります。
現代の金管楽器ではイエローブラス、ゴールドブラスなど様々な素材が使われていますが、その中でも特に注目すべき伝説的な素材が”クルスペメタル”。 クルスペメタルは、20世紀の偉大なトロンボーン製作者、エド・クルスペが使用した合金です。
豊かな倍音の響きを生み出すと言われるこの合金は、歴史の中に失われそうになるも、ドイツの工房であるタイン社によって現代に復活します。 このクルスペメタルについて、タイン社による紹介文を偶然にも発見したので、備忘録を兼ねて日本語に訳したものを掲載します。(翻訳技術の発展に感謝!)

原文はコチラ
© Heinrich Thein

実はかつてヤマハも似たようなことをしていたのですが、今では生産中止に・・・。

タイン・クルスペ・スタイル金属の歴史

歴史的な金管楽器の研究において、私たちは現代の真鍮ではなく歴史的な合金と歴史的な工法を用いて本物の音色を再現することを目指しました(この研究はニコラウス・アーノンクールによって提案され、支援されました)。 研究では、19世紀と20世紀に作られた楽器の金属サンプルも分析しました。
金属の分析はフランスのレンヌ大学の先史考古学研究所で行われ、歴史的なチェンバロ弦の分析プロジェクトと並行して進められました。 優れた金管楽器のサンプルからの分析結果は、FOMRHI Quarterly(歴史的楽器製作者・修復者協会)の冊子に「歴史的真鍮金属についての研究報告」という論文として発表しました。 分析によって、歴史的合金は現代の真鍮(現在ではCu58Zn42 、Cu70Zn30、Cu85Zn15など特定の組成でしか入手できない)よりもはるかに多様な組成・成分を有することが示されました。
レミー・グッグの研究による『歴史的』非鉄金属冶金学と、カール・ハッケンベルクによる『現代的』な非鉄金属冶金学を学ぶ過程で、私たちは重要な事実を発見しました。
わずか1%未満の微量な合金成分であっても、金属の熱特性や加工時の変形特性に決定的な影響を及ぼすことがわかったのです。 つまり、これらの多様な合金組成の違いが音色、レスポンス、透明感、音の伝達力などの音楽的特性をもたらすのです。
20世紀最高のトロンボーン製作者として知られるエアフルトのEduard Kruspeが頻繁に使用した金属(音楽家の間では「クルスペメタル」と呼ばれる)は、現在では手に入れることはできません。 微量の銀を含むこの特別な合金は、極めて薄く延ばすことができ、楽器のベル部分を形作るのに理想的です。 これは、特に薄いベルを好み、ベルの端に向かってさらに薄くなる高級楽器の製作において極めて重要なことです1
そのため、このようなベルには細いニッケル銀のリムが取り付けられていることがよくあります。 これはフォルテッシモの音をまとめながら、ピアノでの滑らかで豊かな音色をも両立させます。
ドイツの工芸的楽器製作者、特にEduard Kruspeは常に薄くて軽い楽器を好みました。 産業化された(主にアメリカの)楽器が、プレス部品のために厚い板金を好むのとは対照的です。 こうした特殊合金は数トン単位での注文のみで製造されるため、生産規模の小さい職人的な工房では取り扱うのが困難です。
そこで、ブレーメンの銀細工工房との共同で、少量の試作合金を鋳造する方法を開発しました。 この作業と金属板への槌打については、1981年に「バーゼル歴史的音楽実践年報V」にて発表しました。 これにより、歴史的合金を使った音色を初めて聴くことできるようになりました。 その音色は奏者を魅了し、これまで見過ごされていた金管楽器の音色における金属素材の品質が、いかに重要であるかを再認識しました。
「現代の」楽器、トランペット、トロンボーン、ホルンは今日、クルスペが使用した特別な金属の復活による恩恵を受けています。 ブレーメンのタイン兄弟は、多額の資金を投じて「クルスペメタル」を再び大量に鋳造し、わずか0.30mmという薄さの金属板に加工することで、自らの楽器製作に活用しました。
その結果、かつてのクルスペ・トロンボーンで使われていた合金による、見事に繊細で薄く打ち出されたベルが再び製作可能となりました。 この品質への敬意を表して、私たちはこの合金と加工方法を「タイン・クルスペ・スタイルメタル」と呼んでいます。 もちろん、優れた楽器を作るためには、常にいくつかの要素が揃う必要があります:2
・非常に良く熟成された基本モデル
・最高の職人技
・最高の材料
・楽器製作者による奏者の個性に合わせた調整
・奏者、マウスピース、楽器の調和

以下は「タイン・クルスペ・スタイルメタル」の利点です:
・倍音が豊富な音色へと個々の音色が変化します。
・息を吹き込み方や音量の強弱によって、a、o、e、uといった様々な母音に似た音色の変化が容易に表現できるようになります。
・刺激的で表現力豊かな音響像が生まれ、空間を満たします。
・高い耐食性により楽器の寿命が長くなります。

ストラディバリウスやアマティといったヴァイオリン製作の巨匠たちが名器の基準を確立したように、金管楽器の世界でも最高級の素材と芸術的な技術、そして研究と投資によって、最高水準の品質を実現することができるのです。

© Heinrich Thein, 2006


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  1. 1枚取りベルのことと思われる 

  2. ここの箇条書き部分は、あえて自動翻訳の味を残してみた